講演の概要 |
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はじめに、元財務大臣の藤井裕久氏より柳澤氏の紹介を兼ねて次のような挨拶があった。
岸総理は(第1に国連)(次に国民生活)(自衛隊)(日米安保)と国連を第1に考える国防の基本方針を作られた。椎名越三郎氏なども「国連が一番大切だ」と言っていたことが心に残る。岸さんは日米安保は集団的自衛権であるとの批判に「絶対に守るべきは日本国憲法だ、それは海外に派兵してはいけないんだ。」日本が緊急事態になったときに自らを守るのは当たり前で、個別自衛権の問題なんです。なんとしても「集団」という言葉を使いたいと言う一部の人の意見に過ぎないと思っている。 |
【集団自衛権のウソ】
40年間防衛の現場最後の4年は官邸にいた。先日は自民党に呼んでいただいた時にも、「こんな事を考えておかなくても良いのですか」という話をした。批判の声も出たが、私の言っていることは小泉政権や福田政権の政府の公式見解を述べているだけなのに、私としては「あなたたちが勝手に右に舵を切ってしまっただけでしょ」という思いでいる。集団的自衛権とは小さな国が寄り集まって、大きな国から身を守るためのモノなんだという言い方があるが、今までの歴史の中では大国が軍事介入するときの論理として集団的自衛権が利用されているわけだ。
日本は70年前に戦争を起こしている。そのしがらみを引きずっているために普通の国にはなれないという点。もっと客観的な基準で言えば、他国を守るために軍隊を送るという事は「普通の国」ではやらないこと。軍事大国がやることなので、集団的自衛権を使わなければ「普通の国」になれないというのはウソだろうと思うのだ。 |
【アメリカとのパートナーシップ】
強い国と組んでいる同盟関係では、ジュニア・パートナー(日本)に決定権がないという点は悩みだ。悩みの一つは「巻き込まれる心配」、悩みの二つ目は「見捨てられる心配」だ。
今までは「巻き込まれる心配」だけをしていたが、今「見捨てられる心配」という新たな心配が出てきたので、ちょっと混乱しているところもあるだろうが、そもそもアメリカは日本を見捨てるだろうか。私は見捨てないと思う。というのは、これは人間どおしの友情の問題ではなくて国益がかかっている問題で、アメリカにとって日本という国は、太平洋を挟んでアジアの最前線にあり、先進国である日本に自国の軍隊の拠点を置けば家族が生活することに困らないし、航空母艦の修理・補給を出来るのは太平洋インド洋にかけてはアメリカ本国と横須賀だけであるという、いくつもの重要な位置づけになっている。インフラが整っていてそこそこ文化的でテロリストもいなくて治安がよいということがアメリカにとって非常に重要だ。日本を見捨てるという事はアメリカがアジアから撤退しなければならないという事を意味している。だから、そんなに「アメリカさん居てくれてありがとう」というようなひけめに感じる事はないので、お互いに役に立っているねというでバランスはとれているという事が今までの認識だった。 |
【最小限という表現】
集団的自衛権で「必要最小限」という言葉が用いられるが、これは政府が大好きな言葉で、武器使用をすることを前提としての必要最小限とは、こどもがお母さんに買い物をねだるときに「必要最小限のお小遣いをちょうだい」というわけにはならない。お母さんはまずお小遣いの目的を尋ねるはずだ。あたりまえの話だが、これが実力組織である自衛隊が憲法にある個別的自衛権を超えて、自国から他国へ行動するときには主権者である国民が納得できる目的と議論がないといけない。田中内閣では明確に「集団的自衛権は持つが現憲法下では行使できない」と言っている。
安倍内閣の説明で集団的自衛権が行使できるのは、我が国と密接な関係がある国が攻撃を受けた場合とある。通常は同盟国すなわちアメリカを指すのだろう。
放置すれば国民の存立がおかされ国民の生命自由が根底から覆される事態。この場合には先制もあり、自らが進んで戦争当事国になるということだから、攻撃するだけではなく、ミサイルが飛んできたときにその下にいる国民の生命・自由はいったいどうなるのですか?とうことだ。出ていくことだけでなくここもきちんとしていなければならない。 |
【戦争と国民感情】
私たちは注意しなければならない。それは、戦争を進めるときに必要なのは何か、「国民感情」である。戦争遂行に国民感情をあおり立てることだ。戦争を起こさせないためには国民感情を沈静化させなければならない。ところが中国も韓国もまったく逆のことをしている。政治家が票を取りやすいからだ。そこに私は、北東アジアの最大の危機があると思っている。
我が国は、どの国の紛争にも武力をもって介入しなかった。その国の国民にむけて一発たりとも銃を発射していない。そのような我が国の平和に対するブランドが国際社会に認められてきた。安倍総理の行っている様に「戦後レジーム」からの脱却をするのか、そうではなくて我が国の平和のブランド力を活用していくのか、考えよう。 |
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